宝塚には「新人公演」という独特の制度がある。
本公演と同じ作品を、一定学年以下の生徒だけで上演する。
トップスターが演じている役を、まだ若い男役が演じる。
トップ娘役の役も若手娘役が担当する。
冷静に考えると、かなり大胆な制度だ。
大劇場で上演している作品を、そのまま若手に任せる。
観客も入る。
批評もされる。
主演者には大きなプレッシャーがかかる。
しかし、この新人公演があるからこそ宝塚のスター育成は面白い。
トップスターを見て学ぶだけではない。
実際にその役を演じてみる。
何千人もの観客の前に立つ。
舞台の中心に立った瞬間、自分が何を持っていて何が足りないかがはっきりする。
歌が足りない。
芝居が弱い。
存在感が足りない。
逆に、
「意外とこの人、真ん中が似合う」
と発見されることもある。
ファンにとっても新人公演は特別だ。
本公演では後ろにいる若手が、突然主役になる。
普段は数分しか台詞のない人が、大役を演じる。
そこでスター候補を発見する。
数年後、その人が本当にトップスターになったとき、
「新人公演主演の頃から見ていた」
と言える。
これほど長期的に成長を見られる芸能は珍しい。
新人公演は、単なる若手公演ではない。
宝塚という組織が持つ「次世代リーダー育成制度」でもある。
失敗することもある。
未完成だから当然だ。
しかし完成してから舞台に立たせるのではなく、未完成のうちに責任を与える。
その経験が人を育てる。
企業の人材育成でもよく言われることだが、宝塚はそれを100年近く舞台上で実践している。
新人公演を見るとき、「上手いか下手か」だけを見るのは少しもったいない。
未来のトップスターが初めて大劇場の中心に立つ瞬間を見ているかもしれないのだから。
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